法定後見における保佐は民法の中で「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者」と定義されています。成年後見人に比べると被保佐人は症状が軽く、原則は単独で法律行為をすることができます。

日常的に必要な買い物程度は単独でできますが、自己の重要な財産を管理・処分(不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借り等)は自分ではできず援助してもらう必要があります。

保佐人が家庭裁判所で選任されると「被保佐人」となります。

 

 

開始の手続き

申立てができる人

本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長などです。

本人の同意

本人の同意は不要です。

判定の方法

医師の診断書または鑑定書による

保佐人の権限

同意権

保佐人の同意権の範囲については民法13条第1項で定められおり、以下の内容に同意権が認められています。

民法13条第1項所定の行為
1 元本を領収し又は利用すること

・元本の領収とは、利息、家賃、地代が生じる財産の受領や預貯金の払い戻し、貸したお金を返してもらうことをいいます。また金銭の利息付貸付も含まれます。

2 借財又は保証すること

・借金(金銭消費貸借契約の締結)や保証人になること(債務保証契約の締結)

3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること

  1. 土地に関すること
    • 不動産の売買や賃貸借契約の締結(解除も含む)、抵当権の設定
  2. その他の重要な財産に関すること
    • 金銭の貸付(無利息貸付)
    • 贈与又は寄付行為
    • 通信販売(インターネット取引を含む)や訪問販売等による契約の締結
    • クレジット契約の締結
    • 商品取引(株式売買、先物取引、FX、デリバティブ取引等)
4 訴訟行為をすること

・民事訴訟において原告として訴訟すること。ただし、相手方が提起した訴訟への応訴や、離婚・認知などの裁判(人事訴訟)については保佐人の同意は必要ありません。

5 贈与、和解又は仲裁合意をすること

・贈与については他人に与えるときは保佐人の同意は必要ですが、贈与を受ける場合は保佐人の同意は不要です。

6 相続の承認若しくは放棄または遺産の分割をすること

・分割協議の際には、保佐人の同意が必要になります。

7 贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申し込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること

・遺言によって財産を分けてもらえる権利を放棄すること。負担付贈与とは、贈与を受ける代わりに、何かしらの負担を受ける条件付きの贈与のことをいいます。

8 新築、改築、増築又は大修繕をすること

・住居等の新築、改築、増築又は大修繕を目的とする法律行為(例:リフォームすること)

9 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること

・民法第602条

  1. 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借は10年
  2. その他の土地の賃貸借は5年
  3. 建物の賃貸借は3年
  4. 動産の賃貸借は6か月

他人に賃貸する場合及び他人から賃借する場合、上記のの期間を超えて契約をするには、保佐人の同意が必要になります。期間内であれば同意は不要です。

※簡単に申し上げると、重要な行為のみ保佐人の同意を得る必要があるというイメージです。また、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は被保佐人の請求により、保佐人に代わる許可を与えることができます。

 

代理権

「代理権付与」の申し立てにより、代理権付与の審判がなされると、特定の法律行為(申し立ての範囲以内)の代理権が家庭裁判所より付与され、保佐人に代わって行うことができるようになります。

「代理権付与」の申し立ては保佐開始の申し立てと同時にだけでなく、保佐開始の審判後にもすることができます。ただし、代理権の付与については被保佐人の同意が必要になります。

取消権

取消の方法

被保佐人・保佐人共にすることができます。方法は特に決められていませんが、相手方に取消の意思表示がなされれば取り消しをすることができます。(例)クーリングオフ制度による内容証明郵便

取消の効果

保佐人・被保佐人によって取り消された行為は初めから無効なものとみなされます。その行為によって被保佐人、相手方が利益を得た場合は、返還をしなければなりません。例えば、被保佐人が保佐人の同意を得ないで借金をした場合、保佐人は原則としてその行為を取り消すことができます。その際当然借りたお金は返すことになります。

ただし返さなければならないのは、現存する現金か、借りたお金で購入した商品だけです。なお、借りたお金を生活費に使った場合、その分自己の財産の減少を防いだということになり、形を変えて利益が残っていると考えられ、返還しなければなりません。

取消ができない場合

取消はすべてにおいてできるわけではありません。取引の相手方を保護し、また取引の安全を図るため、以下のような場合は取消ができません。

  1. 被保佐人が詐術を用いた場合
    被保佐人が、自分は被保佐人ではないと偽って、それによって相手方を誤信させた場合
  2. 保佐人が追認した場合
    保佐人が認めた場合です。例えば被保佐人が単独でした場合の借金の一部または全部を保佐人が返還した場合
  3. 時効
    保佐人がその行為を知った時から5年経過した場合又はその行為から20年が経過した場合